Ken Nishikawa

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Released 22 August 2022


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Released 3 December 2020


Renaissance Pop

In 1995, amidst “Cool Britania” craze, an unknown Japanese artist released an album in the UK. The collection, written, performed and produced by the artist himself, encompassed nearly all spectrum of pop music - Electro funk, Rock, Gainsbourg-isque French Pop, etc.. It, however, failed to create a huge commercial impact and was soon forgotten - until now! CATHRACH is proud to reissue this unique record loved by minute but enthusiastic cult followers for a quarter of a century! Be sure to experience this pop music time capsule on Thursday 3 December 2020!

1995年、ロンドンで無名の日本人アーティストが一枚のアルバムをインディーでリリース。エレクトロ・ポップからファンク、ロックそしてフレンチ・ポップまで網羅したポップ・ミュージックの玉手箱のような作風は一部のミュージシャンやマニアから支持されたが、当時のUKのトレンドだったBrit Popとあまりにも異なっており、時流に乗ることなくいつの間にか消え去ってしまった。そんな幻のカルト盤が四半世紀の時を経てCATHRACHレーベルより2020年12月3日木曜日に奇跡のリイシュー!


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Liner notes |

Renaissance Pop [25th anniversary Remastered Edition]
written by 高瀬大介


まず個人的な話から入らせてもらう。

西川顕さんとの出会いは「ラジオディレクター」と「デビュー前の新人ソロアーティスト」という形だった。
確か2001年とかそのくらいだと思う。

最初の印象は六本木のオフィスで働くオシャレなイケメンでちょっと難しそうなオニイサンという感じで、田舎から出てきて自部屋に引き籠りながら「砂上の楼閣」のような宅録音源を作っていただけの伏し目がちな俺などとはとてもじゃないが共通言語を持って貰えないんだろうな、と思った。
しかし最初の打ち合わせの時、俺のプロフィールのフェイバリットアーティストの項目を見た顕さんから色々話を振られて、ビートルズやプリンス、スライ、ビョーク、エイフェックス・ツインの話で盛り上がった記憶がある。

結局打ち合わせ時間では話がおさまらなくて、その日かひょっとしたら最初のラジオ収録の日かもしれないが、いきなり家に遊びに行って結構話し込んだ。
人見知りが爆発していた当時の俺にとっては画期的な出来事で、割と孤独であった東京での生活の中で、やっと自分のオタク的知識を総動員して話せて、しかもそれ以上の知識と見識でレスポンスを貰える人に出会えた、と感動した。

それ以来友人として、飲み仲間として、恩人として、共同制作者として付き合いをさせてもらっているのだけど、何より彼のことをソウルメイトだと思えるきっかけとなったのがこのアルバムだ。
彼が単なるの博覧強記のラジオディレクター/ギョーカイジンではなく、コンポーザーでありミュージシャンであり全てのプロダクションをマルチにこなす宅録アーティストだとこのアルバムを聴いて知ったことによって、より強く共通意識が持てたように記憶している。

このアルバム「Renaissance Pop」がこの度リマスターされて配信リイシューされるにあって久しぶりに聴いたが、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさと、爆発する才気は相変わらず感じられるし、顕さん独特のセンスは今も昔も変わってないのだなと再確認した。でも声はやっぱ若いね(笑)





最後に資料的な事も少し。

本人曰く、このアルバムの録音時期はあまり覚えてないが、たぶん1992年から1995年までの間、とのこと。
リリースはイギリスのみで1995年8月。 ミュージシャンの友人からは評判が良かったものの、レコードレーベルやマネージメントの人間からは「時代に音があってない」と言われたとか。
イギリスの音楽誌 WIRE の編集長からは高い評価を得たようだ。

「プリンスの代表作『Sign of Times』的な音楽デパートのような作品を作りたかった」と本人が語っている。
なるほど、確かに色んな要素が盛り込まれている作品で、その意味では『Sign of Times』的ではあるが、その雑多な要素が四方八方にテンション高く弾けまくってるところはさすがデビューアルバムという感じで、『Sign of Times』を評す時によく使われる「密室的」という印象は受けない。宅録であるから「密室的」であるのは間違いないし実際のところ相当な「陰」を抱えてはいるのだろうけど、プリンスのまさに「陰にこもった」密室具合に比べると、顕さん本人の人間性なのか資質なのか、よりオープンでユーモラスでかつロック的テンションが高い作品になっていて、決して「独りで部屋で踊り狂ってる」ような暗さは無い。そんな印象だ。

では曲ごとの解説、というか印象を述べていこう。あくまで個人的な印象を。


ピアノとベースが地を這うように鳴りながらも、リズムの重心は軽く、プリンス印のカッティングギターと共に疾走していくトラックが斬新。 その上にニューロマンティック経由のナルシスティックな絶叫ヴォーカルが悶える。 そのミクスチャー具合、一聴してこのアーティストが「変態」であることを証明する、オープニングに相応しいトラック。 listen | 聞いてみる

アルバムの中では比較的シンプルな構成のトラックで、少しジャジーなソウルナンバーだが、最後に堪えきれなくなったのかノイジーなギターソロが入ってくるところがやはりどこかプリンス的。 listen | 聞いてみる

いきなり女性ヴォーカルから始まるが、 これもジャジーでアーバン(死語)な雰囲気を持ったサウンドながら、ヴォーカルはむしろ青く性急。全体的に楽器のチューニングもどこか狂っていたり、女性ヴォーカルが妙に平たかったり、最後のピアノソロに至っては殆ど破綻したようなフレーズのみ。 このギリギリさ具合というか「境界線上の美」みたいなものに妙に「ロック」を感じる。 listen | 聞いてみる

一転してクラシカルな雰囲気のトラックだが、サウンドの質感やコード展開が、B級的(失礼!)な胡散臭さを強烈に放つ。 クセになる曲とはまさにこのような曲。 listen | 聞いてみる

歪んだエレキギターが全体を支配するロックナンバーだが、隠し味的にアコースティックギターが入ってる辺りはビートルズやT.Rexの匂いがする。 このアルバムでは比較的シンプルなロックナンバー。 listen | 聞いてみる

プリンスからの影響をダイレクトに感じさせるファンクナンバーだが、よりダークで混沌とした印象を受けるのはベースの重心の低さと本人のパーソナリティからくるものだろうか。 ジェントルなアルトヴォイスからハイトーンシャウト、怪鳥的雄叫びまで顕さんのヴォーカルのバリエーションが楽しめる曲だ。 listen | 聞いてみる

これも強烈にプリンス臭を放つ変態ファンクトラック。 いわゆる「カミール声」もフューチャーした憑依っぷりだが、やはりどこかしらに滲み出てくるロック的な攻撃性は、単なるプリンスエピゴーネンの域を越えて本人のオリジナリティをかえって表している。 メロディとアレンジにインド音楽的な要素を感じる。ラーガファンク? 途中のラップやチープなサウンドのブラスソロも含めて、とにかく「音のごった煮」状態。 listen | 聞いてみる

ジミヘン的なワウギターソロをフューチャーしたサイケで混沌としたトラックの中でもがくヴォーカルが素晴らしい。 この時期の顕さんのヴォーカルは、若さ故もあってかなり攻撃的だが、外に向かう攻撃性よりも内に向かう攻撃性を強く感じる。それゆえに「もがく」と書いてしまう。 途中にいきなり女性の声で日本語を挿入してくるあたりが顕さん的なユーモアだが、全体的には恐ろしく性急なテンションが終始続く攻撃的なファンクチューンだ。 サウンドデザイン的には「パレード」辺りのプリンスからの影響が強い。 listen | 聞いてみる

前曲でも登場した女性のヴォーカルでフルに歌う曲。この曲に出てくる日本語をサンプリングしてこの曲に先んじて前曲に挿入したようだ。ひねくれている(笑) 日本語も交えたロリっぽい声にちょっとメルヘンな曲、というのはジェーン・バーキンにどエロい歌を歌わせるセルジュ・ゲンズブールへのオマージュといったところか。 この曲はこのアルバムの中では一番古い録音で1991年頃のレコーディングとのこと。 他の曲は全部1/4インチのFostexのオープンリール8トラック・レコーダーで録っているが、この曲だけはFostex製カセットMTRの4チャンでの録音のようだ。一本2,000円くらいするセラミック製の業務用のカセットを使用したらしい(笑)。 listen | 聞いてみる

リフもメロディも割とシンプルで、ワウがかかったエレピがスライ&ザ・ファミリー・ストーンを思わせる、比較的「まとも」なファンクナンバー。 この曲でも顕さんのラップがフューチャーされている。 listen | 聞いてみる

このアルバムの中でも随一の「可愛い」ナンバーであり、かつ紛うかたなき変態ポップ。 本人は意識してなかったようだがスパークスっぽさを感じる。スパークスは顕さんのフェイバリットバンド。 これもクセになるナンバーで、個人的には何度も嗅ぎなくなるよう匂いを放っている。 listen | 聞いてみる

Suede 等に代表される90年代初頭のイギリスで起こったプチ・グラムロック・リバイバルから影響を受けて作った作品。 本人曰く作詞作曲レコーディングを一日で全部やってしまった、というまるでジョン・レノンの「インスタント・カーマ」を思わせるエピソードだが、60年代GSや80年代歌謡ロックに通ずる「クセになるダサさ」を持った面白いトラックだと個人的には思っている。 余談になるが、日本のヴィジュアル系バンドのヴォーカルの原型になったのがキュアーのロバート・スミスとジャパンのデヴィッド・シルヴィアンだと思っているのだが、顕さんのヴォーカルにはどこかシルヴィアンの影響があると思うので、こういうちょっとジャパニーズな匂いを放つ曲を聴くと、ビジュアル系のパロディを歌ってもらいたくなる。 listen | 聞いてみる

お、何が始まるのか?というようなオープニングSEに導かれながらシタールの音が一音鳴らされてフワッとした軽快なラーガファンクのリズムトラックが流れ出す。 このアルバムでは一番ワクワクさせられるイントロ。 シタールが良いアクセントになっているポップなファンクトラックの上で、これまたひたすら叫び悶えまくるヴォーカルが気持ち良い。 listen | 聞いてみる

変拍子に聴こえるが実はシンプルな4拍子、というリズムパターンから作っていった曲。 人の居ない離島の海岸で独り寝転びながら夕日を眺めている寂しげな老人、という景色が浮かんでくる曲。 ストリングスの白玉コードが全体を優しく包んでいるアレンジはシネイド・オコナーの「Nothing Compare 2U」からの影響が伺える。 listen | 聞いてみる

琴を思わせるような「和」なアルペジオと、少し捻りのきいた寂しげなメロディを持った小品。 そんな曲にこのタイトル(笑) listen | 聞いてみる

この曲も本人曰くセルジュ・ゲンズブールのLa Javanaiseのパロディ(笑)とのこと。妙なピッチ感も上手くチャネリングしている。 テンション高いごった煮ファンクアルバムの最後の最後でこの曲で閉めてしまう辺りの顕さんのひねくれたユーモアのセンスは昔から健在だったんだなぁと、個人的には嬉しくなってくる。 listen | 聞いてみる

オリジナルアルバムには無かった貴重なボーナス・トラック。 完全にレニクラのあの有名曲のパロディ。 本人談によると、丁度ロンドンに引っ越しが決まり、録音機材も買い手が見つかって部屋を片付けてる時に「別れる前の最後の一発」的な感じで適当に作った曲、それこそ買った人が荷物を引き取りに来る2、3時間前にサクッと仕上げた。とのこと。 ミックスもビートルズ的というか60年代的な左右泣き別れミックスで、しかも最後の方は左右を行ったり来たりさせたりと、中々にテキトーで投げやりな感じだが、ロンドンに向かう直前のプレ・ルネッサンス・ポップ期とも言える録音であり、正にこのアルバムの最後を飾るに相応しい作品。 listen | 聞いてみる


ということで長々と書いてきたが、本人の話を交えつつも あくまで個人的な感想の域を出ないライナーノーツなので、事実誤認や見当外れの部分もあるだろう。 そこらへんの訂正、注釈、追記、言い訳(笑)などは本人への改めてのインタビューの機会に譲りたい。



Cathrach

Cathrach

A pessimist music label that dares to dream.
CATHRACH means [fortified] city in Old Irish - representing our commitment to protect artists’ rights and their artistic freedom at all cost.

希望はないけど夢はある音楽レーベルです。
CATHRACHはアイルランド語で「街」「城壁都市」という意味です。様々なプレッシャーや心ない攻撃からアーティストを徹底的に守っていくレーベルという意思表示です。